目付け

「遠山の目付け」「八方目」という口訣や、宮本武蔵の「観の目つよく、見の目よはく」という言葉に代表されるように、日本武術においては、一点に視線を定めず、全体を眺める目付けが強く要求される。実際に相手と立ち会ってみるとわかるが、一点に意識を集中させてしまうと、全く相手の動きに対して反応が鈍くなってしまう。ほとんどチラ見する程度のほうがかえって良い位である。
 最近知ったのだが、人間の網膜のレセプターの内、中心視野に700万個ほど存在してカラー映像を作り出すのが錐状細胞、周辺視野に1億3000万個ほど存在してモノクロ画像を作り出すのが桿状細胞で、この桿状細胞を使った情報処理は右脳を使うため大量高速な処理が可能であるらしい。
 なるほど、このあいだジュンク堂で購入した動体視力の強化ソフト「武者視行」内の周辺視野トレーニング(右脳トレーニングと副題がつく)でも、遠山の目付けを用いるだけで、かなり高速のトレーニングについていけたのは(逆に言うと、視点を画面上に定めてしまうとにっちもさっちもいかない)そのような理由があるのかもしれない。
 私が人にこの目付けを教えるときに、最も好んで用いる言葉が「(目で見るな、)目は写せ」である。どこかで聞いて以来、非常に感覚的にわかりやすいので、使わせて頂いている。また、中国武術の大家、笠尾恭二先生の著書『君はもう「拳意述真」を読んだか』(←良い本です。是非お勧めします)内の、笠尾先生がかの王樹金老師より教わったという「眉間を開け!」という言葉も、大好きなものの一つで、非常に優れた口訣だと思う。「眉間を開く」意念を持つことで、目付けも自然と理想的なものになる。(もちろん効能はそれだけではないが)
 まあゴチャゴチャ難しいことを言わなくても、実際に武術や格闘技を嗜んでいらっしゃる方は自然と良い目付けが出来ているもんですが、こういうことをつらつら考えちまうのがヲタクの性ですね(^^;

今日の鍛錬