朝青龍と琴欧州

人柄はともかくとして、今一番上手い相撲をとるのは朝青龍だと思う。特に何に感心するかというと、体の転換のタイミングの取り方の上手さと、身のこなしである。相手がグッと押し込んできた瞬間を見計らってパッと体を転換するあの取り口は、合気道などの他武道をも凌ぐ面がある。やられた方は自分が圧していると思ったところを一気に返されるのであるから、たまらないだろう。あそこらへんの勘のよさと体遣いの上手さはモンゴル相撲によるところも多いのかもしれない。それだけでなく、がっぷり四つに組んで寄り切る王道の相撲もしっかりと取れるところは横綱の面目躍如といったところであろう。
それにしても腑に落ちないのは、琴欧州の今場所の活躍である。見たところ、あれだけ腰が高いのに組んでそのまま寄りきられてしまう力士が多い。いくら身長の差があって、懐が深いからといって、ああまでやすやすと取られてしまうのはどういうことだろうか。ただ、あの腰高はやはりウィークポイントであるのは確かで、立会いの優勢を利用してそのまま押し切る分には強いが、一端形勢が逆転して土俵際に追い詰められると、粘りが無くあっさりと土俵を割らざるを得ないように感じる。また、朝青龍風の体かわしもよく見るが、軸や体のぶれを見るに、朝青龍にはまだ及ばないと思う。
ただ、まだ実力はいくらでも伸びると思うので、是非頑張って欲しい。相撲はその特徴(腰を深く落とした体勢が基本)ゆえ、生活の中に腰を深く割る習慣の比較的少ない西洋の方達には難しい武道ではあると思うが、琴欧州がどこまでやれるか是非見守っていきたい。
それにしても最近の日本人力士は余り見るところがないように感じる。このあいだの読売夕刊の記事で、力士で間違った四股の踏み方をしているものが結構いるといったような記事を見たが、やはり基礎をおろそかにすべからずと思う。四股・てっぽうで築きあげた磐石の基礎の上に技が重ねられていくのであるから、基礎作りがダメなら全部ダメである。外人力士に頭をおさえられている現状をしっかりと認識し、確固たる意思を持って日本国技に取りくむ姿勢をそれぞれがもつことが重要ではないだろうか。

今日の鍛錬

立禅、四股、腹筋、背筋、指立て、腕立て、レスラー・ブリッジ、首アレイ、劈拳、崩拳